「歯肉炎」という言葉を聞いた事がありますでしょうか?
「歯肉炎」は「歯周炎」と名前が似ていますが、症状や炎症の進行度合いが異なり、区別されています。
歯肉炎とは
歯ではなく、歯の周りの歯周組織に起こる炎症のことを、まとめて「歯周病」と言います。
歯周組織は、歯肉(歯ぐき)、歯根膜(歯の根っこを取り囲む薄い膜)、歯槽骨(顎の骨)、セメント質からなります。
「歯肉炎」とは歯周病の初期の段階のことで、歯周組織の上部である歯肉(歯ぐき)に炎症がとどまっている状態です。
歯肉炎が進行し、炎症が歯槽骨など歯を支える組織にまで進行すると、「歯周炎」となり歯槽骨が溶け始め、最悪の場合、歯を支えることができなくなり歯がグラグラしてきて、抜歯になることがあります。
歯肉炎の原因
歯肉炎の原因はプラーク(歯垢、細菌の塊)です。
歯と歯の間や、歯と歯ぐきのきわなど、きちんとした歯磨きができていないと、歯茎に炎症が起こる原因になります。
特に歯並びが悪く歯が重なっていたり、大きな被せ物が入っている場合は要注意です。
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には歯周病菌はいません。
虫歯菌と同様、スプーンや箸、お皿の共有などで、保護者から感染しますので、気をつけるようにしましょう。
また、年齢を重ねてからも、口移しやキスなどでうつると言われております。
歯肉炎の症状
歯肉炎は、歯周組織の上部の歯肉だけに炎症がとどまるため、症状としては
- 歯茎が赤く腫れる
- 歯ブラシなどで血が出る
などといったものが挙げられます。
軽度の場合は、痛みもないため、放置されることが多いと思います。
症状が強くなり、出血量が多くなったり、痛みが出てから、初めて歯科医院を受診される方が多いです。
症状がないまま放置していると、炎症が深くまで進んでいき、歯を支えている顎の骨(歯槽骨)を溶かし始めると、「歯周炎」に変わります。
歯肉炎の診査・診断
まずは歯科医院で、歯ぐきの炎症度合いや、プラーク(歯垢)の付き具合を確認します。
そして、レントゲン写真を撮影したり、歯周ポケットの深さを検査することで、炎症の進行度合いを調べます。
歯肉炎の治し方・治療法
きちんと口腔ケアをする
歯肉炎が起こる原因は、歯垢(プラーク)の磨き残しになるため、まずはどこに磨き残しがあるかを一緒に確認します。
そして、うまく磨けていない部分をきちんと磨けるように、歯科医師や歯科衛生士から、歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシの方法を指導させていただきます。
そして、ご自身できちんと口腔ケアをしていただき、磨き残しがないようにして、炎症を引かせます。
クリーニングをする
歯垢が残ったままになり、徐々に固くなり歯石になった場合は、歯ブラシでは取ることができません。
専用の器具を用いて、歯ぐきの際に付着している歯石を取るクリーニング(スケーリングと言います)を行います。
歯の表面にも歯垢(プラーク)が付いている場合は、歯の表面のクリーニング(PMTCと言います)を行います。
歯肉炎の予防方法
きちんと口腔ケアをする
治療法と同様ですが、毎日のご自身での歯磨きをきちんとする事で、歯肉炎は防ぐ事ができます。
時間や手間を惜しまず、歯間ブラシやデンタルフロスを併用するようにしましょう。
定期検診を受ける
ご自身ではきちんと磨けているつもりでも、歯と歯の間などにはどうしても磨き残しが残りやすいです。
歯肉炎は症状が出ない事が多く、気がつかないうちに歯周炎になり、顎の骨が溶かされ始めているかもしれません。
歯科医院で、定期的に歯ぐきの状態をチェックしてもらい、問題が起きていないか確認してもらうようにしましょう。
また、その際には歯や歯ぐきのクリーニングも行うため、今後の歯肉炎、歯周炎予防にもつながります。
いかがでしたでしょうか?
歯周病の始まりともいえる「歯肉炎」。
症状が少ないため、気がつかない事が多く、症状が強く出る頃には、歯周炎となり歯を支えている顎の骨がほとんど溶かされていることもよくあります。
虫歯と違い、なかなかご自身では気が付きにくいため、定期的に歯科医院で検診を受けるようにしましょう。
歯ぐきが赤くなっている、歯磨きの時に血が出るという方は、歯肉炎の可能性が高いですので、ぜひ歯科医院を受診しましょう。